私のせいで、この子の言葉を遅らせたのかもしれない。
同じ月齢の子がペラペラおしゃべりしてるのを見て、胸がきゅっとなる。実家に帰れば、おばあちゃんに「二言語なんてやらせるから、言葉が遅れるのよ」なんて言われたりして。良かれと思って始めたおうち英語なのに、自分を責めてしまう。その気持ち、痛いほどわかるよ。私もまったく同じ夜を過ごしてきたから。
ナカヤマです。海外経験ゼロの夫と、2人の子をバイリンガルに育ててきた。だからこの不安には、先に通り抜けた1人の母親として答えられると思う。
先に、いちばん大事なことを言うね。バイリンガル育児が、子どもの「言葉の遅れ」の原因になることは、基本的にないよ。だから、まず自分を責めるのをやめよう。そのうえで「これは様子見でいい遅れなのか、相談したほうがいいサインなのか」の見分け方まで、この記事で全部渡すね。
結論:バイリンガルが「言葉の遅れ」の原因になることは、基本的にない

もう一度、はっきり言うね。二言語で育てたことが、言葉の遅れ(言語発達の障害)を引き起こす――そういう科学的な根拠は、基本的にないんだよ。これは一部の人の意見じゃなくて、いろんな研究で一致している見解なんだ。
たとえば、バイリンガル教育を研究しているバイリンガルサイエンス研究所(IBS)でも、「二言語にふれる環境が言語発達遅滞の原因になることはない」とはっきり説明されている。リセマムの記事でも同じ見解が紹介されているよ。小児科の先生が発信している情報でも、考え方は同じ。だから「英語をやったせいだ」って、自分を追い込まなくて大丈夫。

えっ、わたし「二言語やると言葉が遅れる」ってずっと思ってた…!じゃあ、もう英語やめなくていいの!?



うん、やめなくて大丈夫だよ、ともみちゃん。「遅れの原因」じゃないからね。むしろ慌ててやめるほうがもったいないこともあるの。それは後でゆっくり話すね。まずは、自分を責めるのをやめよ?
ただね、正直に伝えておきたいこともある。「原因にはならない」けど、“一時的に、言葉がゆっくりに見える”時期がある子はいるんだ。ここを誤解すると、また不安になっちゃう。だから次で、その”からくり”をちゃんと説明するね。
でも「一時的に遅く見える」のは本当。その”からくり”を知ろう


「やっぱり遅れることもあるんじゃない!」って思った?落ち着いて。“遅れている”んじゃなくて、”少なく見える”だけなんだ。これは障害じゃなくて、仕組みの話。そして多くの場合、ちゃんと追いついていく。からくりがわかると、すごくホッとするよ。
片方の言語だけ数えると、少なく見えて当たり前
考えてみて。ひとつの言語だけで育つ子(モノリンガル)は、起きている時間の100%を、その1つの言語に注いでる。でもバイリンガルの子は、その時間を日本語と英語の2つに分けて使ってるんだよね。
つまり、日本語”だけ”を取り出して単語の数を数えたら、少なく見えるのは算数として当たり前なんだ。だって、その子はもう一方で英語の単語もちゃんと貯めてるんだから。大事なのは、2つの言語を合算した「概念としての語彙」で見てあげること。そうやって見ると、モノリンガルの子と比べて遜色ないことがわかってる。日本語の数だけで「うちの子、遅れてる」って判断するのは、ちょっと早とちりなんだよ。
| 日本語の単語 | 英語の単語 | 合算(概念語彙) | |
| モノリンガルの子 | たくさん | ― | たくさん |
| バイリンガルの子 | 少なめに見える | 少なめに見える | 合わせると遜色ない |



つまり、日本語だけ見て「単語が少ない」って焦らなくていいんですね。英語のぶんも足して見てあげるってことか…!



そういうこと、あすみちゃん。数字の見え方に振り回されないで。2つ合わせたら、ちゃんと育ってるんだよ。
多くは9〜10歳ごろまでに追いつくと言われている
もうひとつ安心材料を。幼児期には、バイリンガルの子が語彙や文法の面で同年齢の子よりゆっくりに見えることがあるのは事実。でも、多くは9〜10歳ごろまでに追いついていくと言われているんだ。
言葉って、短距離走じゃなくてマラソンなんだよね。3歳時点の「速い・遅い」で、その子の言語の一生が決まるわけじゃない。だから、今この瞬間の差だけを見て一喜一憂しなくて大丈夫。長い目で見てあげて。あなたも、子どものころの自分が何歳で何語しゃべってたかなんて、もう関係なく生きてるでしょ?(笑)
ここからが本題。バイリンガルの子によく見られる現象の中に、「遅れ」や「異常」と勘違いされやすいけど、本当はまったく正常――というものが2つある。沈黙期と言葉の混ざり。この2つを知ってるかどうかで、これからの数年の心の平穏がぜんぜん違うよ。
沈黙期(サイレント・ピリオド)とは?急に話さなくなるのは正常な段階


「最近、前より話さなくなった気がする……」そう感じることがあるかもしれない。それ、サイレント・ピリオド(沈黙期)かもしれないよ。新しい言語を取り込んでいる最中の子どもが、一時的に発語を減らす時期のこと。第二言語習得の分野では、よく知られた発達段階なんだ。
表面上は何も進んでいないように見える。でも、子どもの頭の中では、言葉の神経回路がせっせと作られていて、いろんな音や意味をため込んでる時期なんだ。そして、ある日いきなり「あふれ出す」ように言葉が出てくる。沈黙期について解説している記事でも、「実はぐんぐん成長している時期」と説明されているよ。コップに水を注いでいて、見た目は変わらないけど、ある瞬間にあふれる――あのイメージに近いかな。
- 「英語で言ってごらん」と出力を求める
- 覚えているか確認するために質問する・テストする
- 話さないことを理由に、インプット(絵本・音源)まで止めてしまう
いちばん大事なのは、インプットは続けて、アウトプットは待つこと。ここで焦って出力を迫ると、子どもは英語そのものを「試されるもの」だと認識してしまう。そうなると沈黙期が長引くどころか、英語自体を嫌いになりかねない。黙っている時期は、止まっている時期じゃなくて、貯めている時期。そう思って見守ってあげて。
ちなみに、英語そのものを嫌がって拒否している場合は、沈黙期とは別の話。そちらはイヤイヤ期の英語教育が驚くほどラクになる4つの術に、頑張らせるのをやめる具体的な方法をまとめてあるよ。
言葉が混ざる(コードスイッチング)とは?混乱ではなく使い分けの芽


「ママ、これtakeして!」みたいに、日本語と英語をちゃんぽんに話すわが子を見て、「混乱してるんじゃ……」って不安になったこと、ない?
大丈夫。これはコードスイッチング(コードミキシング)といって、2つの言語を持つ子に自然に見られる現象なんだ。しかも、ただのごちゃ混ぜじゃなくて、ちゃんと文法のルールに沿って混ぜていることもわかってきている。つまり混乱どころか、2つの言語を使い分け始めた賢い証拠でもあるんだよ。バイリンガルの大人だって、しょっちゅうやってることだしね。



えー!日本語と英語まぜこぜに話すの、てっきり頭がこんがらがってるんだと思ってた…!



ふふ、逆だよ、ともみちゃん。混ぜられるのは、2つの言葉が両方ちゃんと育ってるからこそ。心配しないで、そのまま見守ってあげて。
「異常かも」と思った行動の多くが、実は順調に育ってるサインだったりする。知らないと不安になるけど、知っていれば、むしろ「お、育ってるね」って笑って見ていられるよ。
ちなみに混ざり方は、成長とともに自然と整理されていく。「相手によって言語を切り替える」ができるようになると、混ぜる回数はぐっと減るよ。うちの子たちも、幼児期はしょっちゅう「ママ、これtakeして!」って言ってたけど、今はもう完全に使い分けてる。混ざるのは通過点であって、ゴールじゃない。
本当に気をつけるべきは”バイリンガル”じゃなく”中途半端”


ここからは、私がいちばん伝えたい本音。さんざん安心させておいてなんだけど、ひとつだけ気をつけてほしいことがある。それは言葉の遅れがこわいからって、英語を中途半端にやめたり、急に減らしたりすること。これが、実はいちばんもったいないんだ。
どちらの言語も、たっぷり・一貫して触れさせないと、両方とも育ちきらない「セミリンガル(ダブルリミテッド)」という状態が心配されることがある。これは「バイリンガルだからなる」んじゃなくて、「どちらの言語のインプットも中途半端だから」起きるもの。詳しくはセミリンガルについて解説している記事も参考になるよ。だから、遅れを心配して英語をスパッとやめるのは、実は逆効果になりかねないんだよね。とはいえ「絶対セミリンガルになる」なんて脅したいわけじゃない。正しく、無理なく続けていれば大丈夫。そこは安心して。
母語(日本語)の土台こそ、いちばん大事に
じゃあ何を大事にすればいいか。答えは母語、つまり日本語の土台。言葉が心配なときほど、日本語でたっぷり語りかけて、思いっきり関わってあげて。
言葉の力って、家の土台みたいなもの。母語という土台がしっかりしていると、その上に英語も積み上がりやすい。「英語を伸ばさなきゃ」と焦って日本語をおろそかにすると、かえって両方ぐらつく。だから順番としては、母語をたっぷり→英語は楽しい範囲で。これが、言葉が心配なときの基本だと思ってる。
正直に言うとね、うちの子も一時期、言葉がゆっくりに見えて、不安で眠れない夜があった。健診の前の晩なんて、指折り数えて「あの単語は言える、これは言えない……」ってやってた。今思えば、あれはきっと沈黙期だったんだと思う。でも、英語をやめずに、日本語の語りかけと絵本だけは毎晩続けた。そしたらある時期から堰を切ったように言葉があふれ出して、気づいたら2つの言葉を行き来してた。だから、あのとき焦ってやめなくて、本当によかったと思ってる。
これだけは覚えておいて。
遅れがこわいからって、中途半端にやめてしまうのが、いちばんもったいない。やめるか迷ったら、「減らす・やめる」より、「母語も英語も、無理のない量で続ける」を選んでみて。
- セミリンガルとは?意味・原因・家庭でできる対処法
――言葉の正確な意味と、実際にどういう環境で起きるのか - ダブルリミテッドとは?特徴・原因・防ぐ5つの対策
――セルフチェックリストとケース別の対処法つき - 幼児期のバイリンガル教育で日本語が下手になるは本当?
――「英語より日本語のほうが心配」という人はこちら
“様子見でいい遅れ”と”相談したほうがいいサイン”の見分け方


ここが、この記事でいちばん大事なところ。たくさん安心してほしい。でも同時に、「ぜんぶ大丈夫だから心配いらないよ」で終わらせるのは、無責任だと思ってる。
世の中には、バイリンガルかどうかに関係なく現れる、ちょっと気にかけてあげたいサインもある。もしそういうサインが見られたら、「バイリンガルだから様子見」にせず、専門家に相談していいんだ。バイリンガルは、相談を先延ばしにする理由にはならないからね。下の表は、あくまで「気になるなら相談を考える目安」。これに当てはまる=何か問題がある、という意味じゃないよ。
| あまり心配しすぎなくていい(正常な範囲のことが多い) | 気になるなら相談を考えたい目安 |
| 日本語だけ見ると単語が少なめ(2言語合わせると育っている) | 日本語・英語を合わせても、言葉や反応が極端に少ない |
| 一時的に話さない時期がある(沈黙期) | 名前を呼んでも反応が乏しい/視線が合いにくい |
| 日本語と英語が混ざる(コードスイッチング) | 指差し・身振り・表情でのやりとりがほとんど出ない |
| 同月齢の子より少しゆっくりに感じる | 一度できていたことが、できなくなった |
大事なことをもう一度。「相談する=英語をやめなさいと言われる」わけじゃない。相談先は、かかりつけの小児科、自治体の乳幼児健診や発達相談の窓口、言語聴覚士さんなど。専門家は「英語をやめろ」と頭ごなしに言うより、その子の状態を一緒に見てくれる存在だよ。気になることがあれば、メモして持っていくと相談がスムーズ。



正直、相談したら「英語なんてやめなさい」って言われそうで、こわくて行けなくて…。



その気持ちもわかるよ。でもね、相談は”負け”でも”ダメな親”でもない。むしろ、子どものために動ける、いちばん正しい一歩なんだよ。心配を一人で抱えこまないで。
安心と、ちゃんと見ること。その両方を持っておけば、もう必要以上に怖がらなくていい。「このサインが出たら相談すればいい」って線引きができてると、毎日がぐっとラクになるよ。
不安なときの過ごし方:焦らない・比べない・責めない


最後に。言葉の進み具合そのものより、もしかしたら大事なことがある。それは、親であるあなたが、できるだけ落ち着いていること。
子どもって、親の不安をすごく敏感に感じ取る。こっちが焦って「ほら、言ってごらん」「なんで言えないの」ってやればやるほど、子どもは口を閉ざしちゃう。私もね、あのころもっと肩の力を抜けばよかったなって、今になって思うんだ。指折り数えて不安がってた時間を、もっと笑って一緒に絵本を読む時間にすればよかったって。
だから、覚えておいてほしい3つ。焦らない・比べない・責めない。とくに「よその子と比べない」。SNSの英語ペラペラ動画も、いったんミュートでいい(笑)。そのうえで、今日からできることを、肩の力を抜いてやってみて。
- 母語でたっぷり語りかける:実況中継みたいに「お風呂あったかいね」「ワンワンいたね」。土台づくりが最優先
- 英語は”楽しい範囲”で続ける:歌・絵本・スキンシップ。やめずに、でも無理もせず
- 子どもの発信を待って、拾う:指差しや「あー」にも「そうだね、〇〇だね」と返す。せかさない
不安になるのは、あなたが子どものことを真剣に考えてる証拠。ダメな親だからじゃないよ。だからこそ、まずは深呼吸。あなたは、もう十分頑張ってる。
まとめ:言葉の遅れが心配なあなたへ


長くなったけど、最後にぎゅっとまとめるね。「バイリンガル 言葉の遅れ」で眠れない夜を過ごしてきたあなたへ、私からの言葉はこれ。
- バイリンガルが言葉の遅れの原因になることは基本的にない。自分を責めないで
- 一時的に遅く見えるのは”仕組み”のせい。2言語合わせて見れば育ってるし、多くは追いつく
- 沈黙期や言葉の混ざり(コードスイッチング)は、正常な過程
- 中途半端にやめるほうがリスク。母語を大事にしながら、無理なく続けて
- 気になるサインがあれば、ためらわず専門家へ(相談=英語をやめる、ではない)
- そして何より、焦らない・比べない・責めない



私も、わが子の言葉がゆっくりに見えて、不安で眠れない夜があった。でも焦ってやめなかったら、子どもは自分のペースでちゃんと2つの言葉を手にしたよ。あなたのその不安は、頑張ってる証拠。大丈夫。気になったら相談すればいい。それだけで、もう十分だから。
「私のせいかも」って自分を責めてた時間は、もう終わりにしよう。今日からは、よその子じゃなくて、目の前のわが子のペースを見てあげて。難しく考えなくていい。まずは絵本を1冊、ひざに乗せて読むことからでいいんだよ。
焦らないで。子どものペースを信じて、日常に言葉を溶け込ませちゃいな。あなたとあなたの子のペースで、ゆっくりいこう。
- 2歳から英語教育を始める前に知るべき5つ
――言葉が出はじめる時期の、具体的な進め方 - バイリンガル子育て失敗の4パターンと立て直し方
――「このやり方で合ってる?」が消えない人へ - バイリンガルは思考力が低いって本当?
――言葉の次にぶつかりやすい不安への答え
よくある質問(FAQ)
- バイリンガルにしたから、言葉が遅れたのでしょうか?
-
二言語環境が言葉の遅れ(言語発達の障害)の原因になることは、基本的にないと言われているよ。一時的にゆっくりに見える時期がある子はいるけど、それは「日本語だけ数えると少なく見える」仕組みや、沈黙期などによるもの。だから「私のせい」と自分を責めないで大丈夫。
- 言葉が遅い気がします。英語はやめたほうがいいですか?
-
慌ててやめる必要はないよ。むしろ中途半端にやめると、どちらの言語も育ちきらないリスクがある。基本は、母語(日本語)をたっぷり大事にしながら、英語は楽しい範囲で続けること。ただし、子どもが強いストレスを感じているようなら、一度ペースを緩める配慮はしてあげてね。
- 日本語と英語が混ざって話します。混乱していませんか?
-
それはコードスイッチング(コードミキシング)といって、2つの言語を持つ子に自然に見られる正常な現象だよ。混乱しているのではなく、むしろ2つの言葉を使い分け始めた証拠でもある。心配せず見守ってあげて大丈夫。
- どんなときに専門家へ相談すればいいですか?
-
名前を呼んでも反応が乏しい、指差しや身振りがほとんど出ない、視線が合いにくい、両言語を合わせても言葉や反応が極端に少ない、できていたことができなくなった――こうしたサインが気になるときは、「バイリンガルだから」と様子見にせず、かかりつけの小児科や自治体の発達相談などに相談を。相談は英語をやめることとイコールではないし、早めに動くのはとても良いことだよ。
